○発電と蓄電 [4]

  もう一つ別の発電方法は水素となり、すでに水素で車を走らせることも可能になっている。水素を燃料として使っている時は二酸化炭素を排出しないが、製造の過程で排出されることがある。例えば天然ガス、石油、石炭という化石燃料から水素を作り出す方法は、二酸化炭素を大量に排出することと、やがて資源の枯渇に直面するので選択肢にならない。

 また太陽光や風力など、自然エネルギーからの電力で水を電気分解し、水素を得る方法もある。これは二酸化炭素の排出量は低いが水を大量に使うため、すでに地球温暖化などで起こっている水不足がさらに加速する。世界人口は年々増え続けており、2020年頃は約80億人だったのが、2050年には97億人、2080年には104億人になると予測されている。この状況で水を使えば、水不足はより深刻になる。
 またこの水電解では、イリジウムのようなレアメタルを使う。これもこのままの使用量でいくと、2050年に埋蔵量の倍以上の使用量となり、枯渇すると予測されているので持続可能な選択肢にならない。
 海水から水素を取り出す研究も行われており、もしレアメタルを使用せず水素が取り出せるなら選択肢となる。

 さらにバイオマス発電からガス、電気、水素を作り出す方法もあり、水素はこれが第一優先のエネルギー源となる。バイオマスは人間や家畜の排泄物、藁やもみ殻など農業残渣(ざんさ)、食べ残し、木材など生物由来もの。例えば家庭用バイオガストイレに、牛の牛糞を入れておく。牛糞はメタン菌を含んでおり、ここに人間の排泄物や食物、雑草を入れるとメタン菌によって発酵しバイオガスが発生する。このガスの主成分は60%がメタン、40%が二酸化炭素。これをこのままガスとして火を起こすや、ガスタービンを回して電力にすることもできる。バイオガスを水蒸気改質設備に通して水素を精製することもできる。小規模な水蒸気改質装置はエネファームとして実用化されている。あとはこの水素を水素化マグネシウムにすると、保管して簡易に持ち運べる。
 バイオマス発電の使用のシンプルな方法は、家庭でガスとして使用することで、設備も複雑にならない。家畜の飼料となる植物は光合成の際に二酸化炭素を吸収し、それが排泄物となって微生物に分解されるときには二酸化炭素を放出する。これをガスとして利用したほうが、同じ排出でも日常のエネルギー源として役に立つ。プラウトヴィレッジでは食物の自給自足率が高まるので家畜の数も増え、その過程で牛や豚などの排泄物の量が増えれば、バイオマス発電はまとまったエネルギー源となる。
 ポイントは生み出されたバイオガスをそのままガスか、電気、水素に変換して使用するかの違いで、それによって設備と複雑さが変わる。当然設備はシンプルなものが良いが、地域の状況などで選択肢は変わる。



 そしてすでに、マグネシウムに水素を閉じ込めて持ち運びできる水素化マグネシウムも開発されている。これは個体から粉末まで様々で、水を加えると水素が発生する。軽くてたくさんの水素が貯蔵でき、運搬も容易になり、これを使った車も開発されている。よって車やショベルカーなど重機のエネルギー源は、マグネシウム電池か水素化マグネシウム、もしくはその両方のハイブリッドになる。それが今後100年、500年と使える持続可能な方法となる。
 水素の貯蔵には他にも高圧圧縮、マイナス253℃に冷やす液体水素、水素吸蔵合金などがあり、その後これを輸送するための設備が必要となる。この場合、設備も大規模で複雑になってくることから選択肢として優先度は低い。

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